可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS:Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome)

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可逆性血管攣縮症候群(RCVS)の画像診断

⭐️典型症例(62F 雷鳴頭痛、視野障害)

✔MRAにて前・中・後大脳動脈領域に数珠状の攣縮

→境界領域に脳梗塞を疑う所見(血管性浮腫の段階)

✔1カ月後に可逆性に攣縮が消失

⭐️用語(Terminology)

▪️定義(Definitions)

✔︎急性に発症する雷鳴頭痛(thunderclap headahe)を主訴とし、可逆性の脳血管攣縮を伴う症候群

⭐️病理(Pathology)

✔発症機序:

交感神経の過活動状態、脳血管内皮細胞の機能異常、酸化ストレスによる血管収縮と拡張の制御障害、脳血液脳関門の破綻

✔若年成人に好発、女性に多い。M:F=1:2[書籍5]

✔10~76歳まで報告があるがピークは42歳[書籍1]

⭐️臨床(Clinical issue)

✔︎RCVSは雷鳴頭痛(人生最大と表現できるほどの激しい頭痛)を来す代表的な疾患

✔︎「雷鳴頭痛」とは、「突然発症で、1分未満に痛みの強さがピークに達するもの」と定義され、人生最大、バットで殴られたようななとど形容されることがある

✔頭痛は95%が再発性[書籍5]

✔︎数日から2週間程度の間に2回以上の雷鳴頭痛があったら、本症を考慮する

✳︎雷鳴頭痛のないRCVSも存在することには注意が必要

✔頭痛は一過性で数日から1週間で消失することが多い

✔︎入浴やシャワー、性行為、労作、Valsalva手技あるいは感情などがひき金になる

✔︎RCVSの少なくとも半数は二次性であり、主に産褥後、あるいは違法薬物(覚醒剤大麻、コカイン)、α交感神経刺激薬やセロトニン作動薬などの血管作動性物質の使用後に起こる

✔脳卒中の頻度は7~54%[書籍5]

✔脳出血の頻度は12.4%[書籍1]

▪️診断基準[文献1]

1)急性の強度の頭痛(しばしば雷鳴頭痛)がある。局所神経症状あるいは痙攣はあることもないこともある

2) 一相性の経過をたどり、発症1か月過ぎると新たな症状を認めない

3)脳動脈の部分的攣縮を血管造影(カテーテル法,MRA、CTA)にて認める

4)動脈瘤性くも膜下出血を認めない

5) 正常あるいはほぼ正常の髄液所見

(蛋白<100mg/d、細胞数<15白血球/L)

6)12週以内に完全あるいは実質的な動脈撃縮の正常化を認める

・診断のスコアリング:RCVS2 score

[文献2]

⭐️画像(Imaging)

▨脳血管攣縮

[文献3]FIG1.より引用

✔数珠状、ソーセージ様、分節状と表現される

✔急性期は末梢血管攣縮→経過で求心性に血管攣縮が移行(centripetal propagation)

初回:M2,M3,P2,P3が多い

求心性移行後:M1、P1が多い

※初回の検査のMRAでは一見正常に見える場合があるので要注意!

✔比較的短期間にMRAを撮像し比較することが重要

✔攣縮は12週以内に正常化

▨FLAIRでの脳溝内の高信号(HV:hyperintense vessels)

[文献4]Figure1.より引用

✔攣縮にともなって皮質間の吻合枝のSlow flowを反映した所見

✔血栓の信号ではない

✔95例のRCVS中21例(22.1%)で報告[文献4]

✔HVありのRCVSでは

・血管攣縮の程度が強い

・虚血やPRESなどを起こす率が高い

SAHとの鑑別ポイント

▨円蓋部くも膜下出血(cSAH:Convexity subarachnoid hemorrhage)

✔円蓋部脳表の血管の破綻により生じる

✔外傷が多く、非外傷性では脳アミロイドアンギオパチー、RCVS、脳静脈洞血栓などの頻度が高い

(その他脳動静脈奇形、血管炎、解離、感染性心内膜炎など)

✔症状は頭痛が多いが、TIA様も多い

✔高齢者ではCAA、若年者ではRCVSを疑う

▨PRESをはじめとする脳浮腫

posterior reversible encephalopathy syndrome

✔急激な血圧上昇や薬剤によって脳血管内皮に障害をきたし、自動調節脳の機能不全により血管性浮腫を呈する急性脳症

✔可逆性の脳浮腫

✔FLAIRで皮質、皮質下、深部白質、大脳半球境界領域に高信号域を有し、ADC値の上昇を伴う血管性浮腫

✔痙攣が主症状

意識障害、視野・視力障害、片麻痺、失語、不随意運動、小脳失調など非特異的な症状

✔RCVSの8~38%で可逆性の脳浮腫が発症[文献1]

✔血管内皮の障害による脳血管の調節障害がRCVSと重複→血液脳関門の破綻、血管性浮腫

✔頭頂後頭葉が多いが、前頭葉、側頭葉、小脳、基底核、脳幹等にも発生

✔M1、P2に攣縮がある症例で境界領域である大脳後部にPRESと虚血病変のリスクが高い

▨ASLでの還流低下

✔ Arterial Spin Labeling

非造影で血液の灌流画像を得る撮影法

✔RFパルスで血液のラベルを行い、

待ち時間をおいて撮影する(PLD:post labeling delay)

✔攣縮を起こした血管の還流領域が低下→MRAよりも高い感度で低還流を検出

✔RCVSではTIA症状が多く、TIA患者にはASLが有用

⭐️治療(Treatment)

✔︎RCVSを来し得る血管作動性物質の中止,RCVSの引き金(性行為、労作、Valsalva手技、感情、入浴やシャワー、身体を屈めること)を数日から数週間避けて安静にする

✔︎薬剤

頭痛に対して鎮痛薬、不安に対しての安定、痙攣に対しては抗てんかん薬、血管攣縮に対してniodipine, verapamil, マグネシウムなどの投与

✔︎血圧モニターによる血圧管理,血管拡張薬の動脈内投与や血管内治療

✳︎ステロイドは血管炎には積極的に投与されるが、RCVSでは発症直後の悪化の可能性があり、避けた方がよいとされる

⭐️データベース(Database)

▨雷鳴頭痛の原因[書籍1を参考に作成]

▨円蓋部くも膜下出血の原因[文献5を参考に作成]

⭐️放射線技師のポイント

✔繰り返す雷鳴頭痛はRCVSを疑う

✔ポジショニング時にシャワーや薬剤などの引き金となる因子を聞き取る

✔円蓋部くも膜下出血では鑑別にあげる

✔MRAによる攣縮のフォローは前回と同じ撮像条件で、磁場強度等がバラバラにならないこと

✔撮像シーケンス

・MRA:血管攣縮の評価、末梢が評価できる広い範囲で

・拡散強調画像:脳梗塞やPRESの検出

・FLAIR:脳溝内の血管高信号、円蓋部くも膜下出血

・T2*WIorSWI:FLAIR高信号のSAHとの鑑別や円蓋部くも膜下出血の検出

✔ASL:還流低下の評価(可能であれば)

⭐️参考文献

[書籍1]秀潤社 神経内科疾患の画像診断 柳下章

[書籍2]メディカル・サイエンス・インターナショナル

[書籍3]ここまでわかる頭部救急のCT・MRI 井田 正博

[書籍4]臨床画像 Vol34 No.10増刊号,2018

[書籍5]Diagnostic Imaging: BrainMiral D. Jhaveri (著)

[書籍6]日本脳卒中学会 脳卒中治療ガイドライン2021

[文献1]Anne Ducros.Lancet Neurol. 2012 Oct;11(10):906-17.

[文献2]Eva A Rocha et al.Neurology. 2019 Feb 12;92(7):e639-e647.

[文献3]M Shimoda et al.AJNR Am J Neuroradiol. 2016 Sep;37(9):1594-8. 

[文献4]Shih-Pin Chen et al.Cephalalgia. 2012 Mar;32(4):271-8  

[文献5]Ashan Khurram et al.Stroke. 2014 Apr;45(4):1151-3.を参考に作成

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