脳動脈瘤の画像診断

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脳動脈瘤の画像診断と撮影法ー破裂リスクの評価と漏斗状拡張との鑑別ー

⭐️病理(Pathology)

✔脳動脈にできる血管のふくらみ

✔中膜が先天的に欠損しているところに高血圧などの要素が加わって形成される(分岐部が多い)

✔くも膜下出血の原因として最多(未破裂症例では破裂のリスクを評価する必要あり)

▶好発:40~60歳以上(男女比2:3)[書籍1]

▨動脈瘤の分類[書籍3を参考に作成]

▨形状による分類

✔一般に嚢状動脈瘤の方が破裂のリスクが高い

✔紡錘とは上図のようコマを回転して糸を紡ぐ道具

▨大きさによる分類

▨病理学的な分類

✔動脈解離は常に拡張するとは限らないので、解離性動脈瘤という病名は適切ではない。

⭐️臨床(Clinical issue)

✔症候性(症状あり)と無症候性(症状なし)に分けられる、症状性では

動眼神経麻痺:散瞳、複視、眼瞼下垂

視神経麻痺:視力、視野障害

⭐️画像(Imaging)

▨ブレブの評価

✔MRAで正確にブレブを評価するためには高い分解能が必要になるので「高分解能シーケンス」を通常シーケンスとは別で用意するとよい

▨計測値の評価

図のような

✔domeを上から見おろす画像

✔neckとdomeが観察できる画像

を作成しておくと計測に役立つ

✔特にASPECT比は瘤の破裂率に相関するため重要(データベース参照)

⭐️データベース(Database)

▨脳動脈瘤の好発部位[書籍2を参考に作成]

✔前交通動脈(Acom)、内頚動脈-後交通動脈分岐部(IC-PC)、中大脳動脈(MCA)の2つで8割以上の瘤が見つかるため、瘤探しをするときはその3つから見る習慣をつけるとよい

▨破裂しやすい動脈瘤の特徴

[文献1,2][書籍1]を参考に作成

▨ASPECT比と破裂のしやすさについて

[文献6TABLE 2.より引用]

✔破裂動脈瘤の約80%がASPECT比1.6以上であったのに対し,未破裂動脈瘤の約90%はASPECT比1.6未満であった→ASPECT比が動脈瘤破裂の予測に有用

▨CT、MRAの検出能[文献3~5を参考に作成]

✔CTAと3TMRAの検出能はほぼ同等

✔CTAは空間分解能が高い→blebの評価、巨大動脈瘤の評価、分枝血管の関係の評価に有用

✔CTAはダイナミック撮影で静脈相も撮影可能→術前シュミレーションに有用

✔MRAは非侵襲→ヨード造影剤が禁忌の場合、経過観察に有用

✔破裂動脈瘤をMRIで撮像する場合は背景の血種がT1強調画像高信号となるため注意

⭐️放射線技師のポイント

✔破裂のリスクを評価できる画像を提供

✔CTAやMRAの検出能を意識する

✔aspect比やsize比を計測できる画像を提供

✔経過観察の段階で条件を変えてしまうと瘤の大きさを過大評価もしくは過小評価する危険性があるため、前回条件を確認して同様の条件で撮像すること

(前回3T、今回1.5Tなどにならないように!) 

✔blebの正確な評価や漏斗状拡張の鑑別用に通常シーケンスとは別に「高分解能シーケンス」を用意すると便利

⭐️鑑別疾患(Differential diagnosis)

▨漏斗状拡張(infundibular dilatation)

✔瘤状突出のドームが先細りになり、連続して血管が認められる構造

✔破裂の危険はなく、動脈瘤疑いから漏斗状拡張に診断が変更になった場合は経過観察終了となるため、正確な鑑別が必要

✔漏斗状拡張を疑う場合は高分解能シーケンスを用意しておいて撮像すると有用

✔瘤は枝の分岐部から発生するのに対し、漏斗状拡張はふくらみの中央から血管が連続している点で鑑別できる

⭐️エビデンス、ガイドライン

▨脳卒中治療ガイドライン2021

◯診断とスクリーニング

推 奨 1.未破裂脳動脈瘤の診断法のゴールドスタンダードはdigital subtraction angiography(カテーテル法による)およびその3次元撮影像である。CT angiography(CTA)、MR angiography(MRA)などは近年の画質精度の向上により、低侵襲な代替え診断法として未破裂脳動脈瘤の診断および治療に用いることが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。   ただし、これらの画像診断は3mm未満の瘤や漏斗状変化、血管の蛇行の強い領域では偽陰性・偽陽性所見がみられることもあり、このような瘤に対して治療を検討する場合には、より慎重な画像評価を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)。

2.脳動脈瘤の血流動態解析(CFD)や造影MRAなどにより、拡大傾向のある不安定な脳動脈瘤を検知できる可能性がある。これらの方法を追加することを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。

3.未破裂脳動脈瘤のスクリーニングは、親子・兄弟2人以上に脳動脈瘤の既往歴がある場合、特に女性、喫煙、高血圧の既往がある場合には発見率が高く、スクリーニングを行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。

4.多発性嚢胞腎を有する患患者では脳動脈瘤のスクリーニングを行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。

◯発見された場合の対応

推 奨 1.未破裂脳動脈瘤が診断された場合、未破裂脳動脈瘤の自然歴(年間出血率)などの正確な情報を患者に示し、今後の方針について文書によるインフォームドコンセントを行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)。

2.未破裂脳動脈瘤診断により患者がうつ症状、不安を来すことがあり、うつ症状や不安が強度の場合は必要に応じてカウンセリングを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。

3.患者と医療者間のリスクコミュニケーションがうまく構築できない場合、ビデオなどによる情報提供や、他医師または他施設によるセカンドオピニオンを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。

4.未破裂脳動脈瘤を保有する場合、生活習慣の改善(禁煙、節酒)、規則的運動の実施、高血圧患者では積極的降降圧治療が勧められる(推奨度A エビデンスレベル低)。

◯治療

1.未破裂脳動脈瘤が発見された場合、年齢・健康状態などの患者の背景因子、サイズや部位・形状など病変の特徴から、未破裂脳動脈瘤の拡大・破裂リスク、および施設や術者の治療リスクを勘案して、治療の適応を検討することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)。

2.治療の適否や方針は十分なインフォームドコンセントを経て決定することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)。

3.未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)から考察すれば、下記の特徴を有する病変はより破裂の危険性の高い群に属し、治療などを含めた慎重な検討をすることが妥当である。  ①大きさ5~7mm以上の未破裂脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル中)  ②5mm未満であっても、   A)症候性の脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル低)   B)前交通動脈および内頚動脈-後交通動脈分岐部に存在する脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル中)   C)Dome neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴をもつ脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル低)

4.経過観察する場合は、可能であれば半年から約1年ごとの画像による経過観察を行うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。特にサイズの大きなもの、部位が後方循環のもの、ブレブを有するもの、60歳以上の高齢者、くも膜下出血の既往のある患者の動脈瘤は注意して観察することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。

5.拡大傾向にある未破裂脳動脈瘤は、治療を再検討することが勧められる(推奨度A エビデンスレベル低)。

6.積極的治療の選択は、開開頭手術、血管内治療を実施するチームが協議の上で、それぞれの症例に最適な治療を決定することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)。

7.血管内治療においては、治療後も不完全閉塞や再発などについて経過を観察することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。

8.開頭クリッピングの術後においても、長期間経過を追うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。

⭐️参考文献

[書籍1]

MEDIC MEDIA 病気が見えるVol7 脳・神経

[書籍2]

脳卒中データバンク

[書籍3]

メディカル・サイエンス・インターナショナル ここまでわかる頭部救急のCT・MRI 井田 正博

[文献1]

Morita,et al.N Engl J Med 2012;366:2474-82

[文献2]

Tominari S et al.Ann Neurol.77: 1050, 2015

[文献3]

Xing W et al.World Neurosurg 76:105-113,2011

[文献4]

White PM et al.Radiology 217:361- 370,2000

[文献5]

Li MH et al. Neurology 77:667-676,2011

[文献6]

H Ujiie et al.Neurosurgery. 2001 Mar;48(3):495-502; discussion 502-3. 

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