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この記事では、足関節外側靱帯の画像解剖についてお話ししていきます。足関節の外側靱帯は、捻挫などで損傷しやすい靱帯であり、損傷を理解するにはまず基本的な画像解剖を理解しておくことが重要です。
この記事の目標は以下の3つです。
- 足関節外側靱帯の基本解剖を理解すること
- 解剖学的な名称は知っていても、「MRI画像上でどの構造がどの靱帯に相当するのか」が曖昧な方のために、実際の画像上で靱帯の位置を把握すること
- 解剖知識と画像診断をしっかりリンクさせること
足関節捻挫で最も損傷されやすいこの部位。「名前は知っているけど、MRIでどこを見ればいいかわからない」という方に向けて、画像と解剖知識をつなげる実践的な内容をお届けします。
🧭 目次
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1. 足関節の基本動作をおさらい
それではまず、基礎知識として足関節の動きについて整理しておきましょう。
足関節の主な動作は以下の通りです。

- 内反:足の底(足底)が内側を向く動き。あるいは足を内側から押して曲げる動き。
- 外反:足底が外側を向く動き。足首を外側から押して外に曲げる動き。
- 背屈:足先を上に向けて曲げる動き。
- 底屈:足先を下に向けて伸ばす動き。
動作名 | 内容 |
---|---|
内反(inversion) | 足の裏が内側を向く |
外反(eversion) | 足の裏が外側を向く |
背屈(dorsiflexion) | 足先を上に曲げる |
底屈(plantarflexion) | 足先を下に伸ばす |
→ 捻挫では「内反+底屈」の動きで靱帯が損傷されやすいです。
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2. 外側靱帯はこの3本が基本!
続いて、足関節の外側靱帯の解剖について3D画像を用いて確認していきます。こちらは右足の画像です。

骨の重要解剖として脛骨(tibia)、腓骨(fibula)、脛骨の下方に距骨(talus)、距骨のさらに下に踵骨(calcaneus)が位置します。
今回取り上げる外側靱帯には、基本となる3本の靱帯があります。
- 前距腓靱帯(ATFL):距骨と腓骨を前方で結ぶ靱帯
- 後距腓靱帯(PTFL):距骨と腓骨を後方で結ぶ靱帯
- 踵腓靱帯(CFL):踵骨と腓骨を結ぶ靱帯
これら3本が、側関節の外側靱帯の基本構成です。
さらに補助的な靱帯として以下の2つがあります。
- 前脛腓靱帯(anterior tibiofibular ligament)
- 後脛腓靱帯(posterior tibiofibular ligament)
これらを外側靱帯に含めることもあります。
【前距腓靱帯(ATFL)】
英語でanterior talofibular ligamentと表記され、ATFLと略されます。
- 起始と停止:腓骨の外果前縁から距骨頸部外側に付着
- 長さ:約18〜20mm
- 幅:6〜12mm
- 形態:扁平で帯状
- 役割:内反・底屈の動きを制動し、距骨の前方変位を防ぐ
- 損傷頻度:足関節捻挫の際、約60〜70%で損傷されるとされています
- 構造のバリエーション:
- 1本のバンド:9%
- 2本のバンド:82%(最も多い)
- 3本のバンド:9%
→ 2本のバンドの間にある脂肪層を断裂と誤認しないことが大切です。
【後距腓靱帯(PTFL)】
英語でposterior talofibular ligament、略してPTFL。
- 起始と停止:腓骨外果底部から距骨後突起外側結節に付着
- 役割:内反・底屈に対する安定性を保ち、特に背屈時に重要な安定性を提供します
- 位置:関節内(ただし滑膜の外側)
- 損傷の頻度:非常に強靱な靱帯で、単独損傷は稀
- 臨床的特徴:ATFLやCFLと合併損傷することがあります
【踵腓靱帯(CFL)】
英語でcalcaneofibular ligament。CFLと略されます。
- 起始と停止:腓骨外果の下方〜踵骨の外側面
- 長さ:20〜25mm
- 幅:6〜8mm
- 形態:円柱状、斜め後方下方に走行
- 緊張する肢位:側関節が中間位または背屈位で最大の緊張
- 位置関係:踵骨の外側壁と腓骨筋腱の間に位置
- 損傷パターン:ATFLとともに損傷されることが多い
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3. MRIでの見え方はこう見る!

それではここまで確認してきた前距腓靱帯(ATFL)・後距腓靱帯(PTFL)・踵腓靱帯(CFL)について、MRIでの画像解剖を見ていきたいと思います。
T1強調画像の横断像では、内側に脛骨が、外側に腓骨が描出されています。下方向にスクロールしていくと、脛骨から距骨に移り変わっていきます。
この距骨と腓骨を前方で結んでいる線状構造が見られますが、これが前距腓靱帯(ATFL)です。
さらにその後方には、同じく距骨と腓骨を結ぶ靱帯が存在し、これが後距腓靱帯(PTFL)です。
ATFLに比べてPTFLはやや太く、扇状に見えるという特徴があります。
さらに下へスクロールしていくと、今度は踵骨が現れます。ここで注目していただきたい構造として、踵骨の外側に低信号の構造物が確認できます。
この構造を追っていくと、腓骨方向へと伸びており、これは腓骨筋腱(peroneal tendon)です。
そしてこの腓骨筋腱と踵骨の外側壁の間に、もう一つ低信号の構造が見られます。これが、踵腓靱帯(CFL)です。
CFLの描出においては、「踵骨の外側壁」と「腓骨筋腱」の間を走行する靱帯を探すことが重要なポイントです。
以上が、ATFL・PTFL・CFLの横断像における画像解剖となります。
冠状断では、前方から後方にスクロールしていくと、距骨から腓骨へと伸びる構造物が見られ、これがATFLに相当します。
さらによく観察すると、付着部の位置に上下2本のバンド構造が確認でき、この方は2本のATFLバンドを有する解剖構造であると考えられます。
この2本のバンドの間に見られるT1強調画像での高信号の脂肪組織を、断裂と誤って診断しないことが重要です。
後方に進むと、距骨と腓骨をつなぐやや太めの構造物が再び現れます。これがPTFLです。
さらに、踵骨と腓骨の間を観察してみると、腓骨筋腱のすぐ内側に細い構造が描出されています。これがCFLにあたります。
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4. 撮像テクニックの工夫が決め手!
- ATFL・PTFLの観察には、脛骨長軸に対して垂直な横断像が最適です。
- ATFLは線状で細く、PTFLはやや太く扇状に見えます。
- CFLに関しては、横断像では両端の付着部を1断面に収めることが難しいため、描出には工夫が必要です。
ここで有用なのが、いわゆる「CFLビュー」と呼ばれる撮像方法です。

これは足底面に対して斜め45度の角度をつけた斜冠状断(oblique coronal plane)で、踵骨と腓骨を1断面に描出できるように設計されています。
CFL損傷が疑われる場合には、通常の断面に加えてこのCFLビューを撮像するか、3D撮像+MPR再構成によって任意の断面を作成することで、より的確な観察が可能になります。
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5. 脛腓靭帯

基本的には、足関節の外側靱帯とは、前距腓靱帯(ATFL)・後距腓靱帯(PTFL)・踵腓靱帯(CFL)の3本を指す場合が多いですが、書籍によっては前脛腓靱帯・後脛腓靱帯を含めて外側靱帯とする場合もあります。
脛骨は英語で「tibia」、腓骨は「fibula」といい、これらを結ぶ靱帯は「tibiofibular ligament(脛腓靱帯)」と呼ばれます。
「anterior(前)」と「posterior(後)」が加わることで、それぞれ前脛腓靱帯(anterior tibiofibular ligament)、後脛腓靱帯(posterior tibiofibular ligament)を意味します。
前脛腓靱帯(anterior tibiofibular ligament)
- 脛骨遠位前方と腓骨遠位前方を結ぶ靱帯で、側関節の外旋ストレスに対する安定性を担う重要な靱帯です。
- 足関節が背屈位で緊張し、底屈位で弛緩する特性があります。
- 高位足関節捻挫(syndesmosis injury)の原因となることも多く、臨床的に重要な構造です。
後脛腓靱帯(posterior tibiofibular ligament)
- 脛骨遠位後方と腓骨遠位後方を結ぶ靱帯で、非常に強靭な靱帯のひとつです。
- 足関節後方の安定性を支える主要な靱帯であり、外旋・背屈方向に強い抵抗力を示します。
📸 脛腓靱帯のMRIでの解剖
脛腓靱帯は横断像で確認しやすいため、以下のように観察します。
- 前脛腓靱帯:脛骨と腓骨の前方を結ぶ靱帯として、明瞭に確認できます。
- 後脛腓靱帯:ややわかりづらいものの、後方の脛骨と腓骨を結ぶ構造物として描出されます。
🧠 まとめ(本動画の要点)
今回の記事では、足関節の外側靱帯の基本解剖について解説しました。
- ATFL(前距腓靱帯):距骨と腓骨を前方で結ぶ。細く線状で、損傷されやすい靱帯。
- PTFL(後距腓靱帯):距骨と腓骨を後方で結ぶ。やや太く、扇状で損傷はまれ。
- CFL(踵腓靱帯):踵骨外側壁と腓骨の間を斜走する靱帯。単層での描写は難しい。
- さらに、前脛腓靱帯・後脛腓靱帯を含めて外側靱帯とする場合もある。
📷 撮像の実践ポイント
- 外側靱帯を描出する目的でMRIを撮影する場合は、足関節を中間位にし、脛骨の長軸に対して垂直な断面(横断像)を基本とします。
- ATFLとPTFLはこの断面で明瞭に描写可能ですが、CFLは1断面で全体を描写するのが難しい構造です。
- CFLを明瞭に描出したい場合は、足底面に対して45度傾けた斜位冠状断(いわゆるCFLビュー)を追加撮像することで、起始部と付着部を1枚の画像に収めることが可能になります。
🧑⚕️ 最後に
撮像する放射線技師としては、医師がどの靱帯に注目しているか、どの靱帯に損傷が疑われているのかを意識し、必要に応じて撮像断面を調整することが求められます。
常に「靱帯を観察しやすいMRI画像を提供する」という意識を持つことが、診断精度の向上に大きく寄与します。
靱帯の名前だけでなく、「どこにどう見えるか」を理解することで、より精度の高い診断サポートができるようになります。ぜひ今回の記事の内容を普段の業務で活かしてください。
📚参考文献
- Ivan Pedrosa et al. Radiology. 2006 Mar;238(3):891-9.
- Choo, Hye Jung, et al. AJR Am J Roentgenol. 2014;202(1):W87-W94.
- Yang, Han, et al.Orthop J Sports Med. 2021;9(11):1–8.
- AJR Am J Roentgenol. 2009 Apr;192(4):967-973.
- Park HJ, et al.Clin Radiol. 2015;70(4):416-423.
- Sharif B, et al. Skeletal Radiol. 2020 Jan;49(1):1-17.
- メディカル・サイエンス・インターナショナル 足の画像診断 小橋由紋子